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ちばの人間探訪

「こどもの根っこを育てる絵本」

(左画像)
 メイツコア 斉藤昇二さん

子どもを育てるのは、大きな木を育てるのと同じ。大切なのは根っこ。根っこがしっかりしていれば、子どもたちは心のままに枝を伸ばし、葉を茂らせ、すてきな花を咲かせることができる。そして、その一番大切な根っこを育てるのが絵本なのだと斉藤さんは言う。斉藤さんは、大手書籍販売丸善の外商部で洋書絵本を取り扱い、営業と講演活動で全国を駆け回っている。日本には、外国の本を日本語に訳した本も多数出版されている。そんな中で『なぜ洋書なのか?』と伺うと、『原画は色がきれい!』と言う。よくよく伺ってみると、日本の印刷で出せる色は限られており、それゆえに外国で描かれたものは、その国で出版されたものが一番だと言うのだ。

語り部の国、日本は文字の社会。それが絵本を楽しむ邪魔をしてしまうことがある。というのも、字の読める子どもたちは絵本の中の文字ばかりを追ってしまうのだ。絵本は絵があるから絵本なのだ。なるほど、言われてみれば文字の読めない子どもたちの絵本の絵を見る力はただものではない。ストーリーにない細かい部分も実によく見ている。その鋭い観察力は、天才的とも言える。文字が読めるようになっても絵本を読んでくれる親が増え、絵を楽しむ力を伸ばせる子どもたちが増えれば、相手を思いやったり自分のすべきことを考えたりする子どもが成長して豊かな日本になるのだろうと、斉藤さんのお話を伺いながら思った。

絵本でも生き物でも芸術でも、とにかく本物を見せることが大切だと斉藤さんは言う。親がそういう動きをしないと、子どもは成長してからも自分の力で考えたり行動したりが難しくなるそうだ。『チューリップの絵を描いてごらん』と子どもたちに聞いたら、どんな絵を描くだろう?たいていの日本のこどもたちは(おとなたちも?)、三角のとんがりを3つ描いて、下を丸くつなぐ赤いチューリップを描くか、限りなくそれに近いものを描くのではないだろうか?でも実際のチューリップは、色も形も様々である。子どもたちにマニュアルを提供するのは、そろそろ止めにしたい。本物を見て、本物を描く力を子どもたちは元々備え持っているのだから。

13年に及ぶ斉藤さんのお働きは順風満帆ということばかりではなかっただろうが、こんな時代だからこそ、絵本が必要なのだと斉藤さんは言う。日本の危機だから、本当に大切なものを浸透させるチャンスなのだと。絵本を通して本物を伝え続ける斉藤さんの声に反応できる大人が増えてほしい。日本の明るい未来のためにも。



*DATA*

メイツコア株式会社
フリーダイヤル:0120-000-976


(2005年12月)


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