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ちばの人間探訪

「おいしさは心」

(左画像)
 オランダ家 社長 池田 孝雄さん

オランダ家と言えば、言わずと知れた千葉県発祥の老舗菓子店で、そんな大きな会社の社長にお会いするということで多少なりとも緊張しつつお話を伺った。しかし、その人柄に、だんだんとまるで父と話しているような温かさと大きさを感じ、仕事も忘れてお話に聞き入ってしまった。もし1000個のお菓子を作ったとしても、そのうちのたったひとつでも『いつもより出来が悪いな。でも、まあいいか』と出してしまったなら、作り手にとっては1000個の中のたった1個だが、それを買ったお客さんにはそのひとつが全てになるのだという。

だから誰がいつ買っても『おいしい!』と言ってもらえるものを提供し続けたいと池田さん。確かにそうだ。私たちは口にした目の前のお菓子を食べて、すべてを評価するのだから。おいしいものを作り続けるということは私の想像以上に繊細なものなのだと感じた。
お客様をあきさせないためにと月ごとに売り出される季節商品も、同じように何度も試食を繰り返して開発され、丁寧に作られ、私たちの手元に届く。原材料の価格には糸目をつけず、『おいしくて身体に良いものを使いたい』と、より良質なお菓子の提供をめざし続けているのだ。それが池田さんの譲れないポリシーでもある。そうやってできたお菓子のひとつ、BayFMの番組内でリスナーと一緒に作り上げ誕生した『千葉ミルフィーユ』は、香ばしいパイ生地にフリーズドドライのいちごとホワイトチョコがサンドされ、イチゴのほのかな酸味とホワイトチョコのほどよい甘みがたまらない。他の定番菓子に加えて、生産が追いつかないほどの人気なのもうなづける。
一見、気の優しいおじ様風の池田さんの趣味は、ジャズ演奏だという。5人で構成されるメンバーの中でドラムを担当しているそうだ。ジャズと言えば、他の音楽ジャンルに比べてもアドリブ演奏が多いことが知られている。つまり、そのときの自分の想いを仲間とやりとりし、その呼吸がオリジナルの世界を生み出していくものだ。そんなお話を伺っていると、池田さんが生涯続けたいというジャズの世界は、お菓子作りと合い通じるものがあることに気づかされた。原材料の組合せで創られるハーモニー、それらをこねるリズム、そしてオリジナルに変化させる想いをこめたアドリブ。原材料選びから始まり、私たちの手元に届くまで、実にたくさんの人の想いが込められている。池田さんの作りたいものがここにある!そう感じた。

想いを込めて優しい気持ちで作ったお菓子をお客様の笑顔を大切に販売する。『幸せな気持ちで食べると、おいしさは何倍にも膨れ上がるから』と、優しい笑顔で話される池田さん。大手でありながら、ひとつひとつのお菓子のために、良質な原材料を選び、丁寧に作り、心を込めて販売する。まさに『おいしさは心』その想いにオランダ家の人気の秘密を見つけた。




(2006年5月)


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